明石高専

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卒業研究-国登録有形文化財 森村橋から撤去された骨組の調査

都市システム工学科の三好研究室では,大学や他高専の教員,民間企業の技術者と共同で,老朽化によって錆びた組立部材の強さを調べる研究に取り組んでいます.組立部材とは,鋼板や鋼材を複雑に重ね,リベットと呼ばれる留め金でそれらを連結して製作された橋の骨組を指します.同部材は,橋の建設に溶接技術が普及する以前の,明治時代から昭和30年代に建設された鉄橋に用いられています.組立部材を使って建設された鉄橋の多くは,建設から60年以上が経過しており,その中には,造形の規範となっている,再現することが容易でないといった理由から,国の登録有形文化財に指定されているものもあります.

 

静岡県駿東郡小山町が管理する森村橋は,明治39年に,旧東海道本線(現在の御殿場線)から旧富士紡績の工場へ敷かれた軽便鉄道用に建設されました.森村橋は,単純支持プラットトラスと呼ばれる形式の橋で,国産の同形式の橋で現存しているものとしては,最も古いものの一つです.森村橋は昭和40年代に鉄道橋から道路橋へ改修され,平成15年まで自動車や歩行者を通す役目を担った後に,通行止めになりました.平成17年には,国の登録有形文化財に指定されましたが,十分な保全がなされず,放置されてきたため,著しい劣化が進行し,文化財の消滅が危惧されてきました.

 

しかし,町では,殖産興業遺産活用プロジェクトとして,森村橋の復原に取り組み,平成31年1月下旬から2月にかけて森村橋を解体し,同月から令和元年10月にかけて,橋梁メーカーの工場で部材の修復が行われました.そして,同年11月~12月にかけて修復後の部材を現地へ運搬して組み立てて,同年12月中には復原される予定となっています.(森村橋の詳細は,下記を御参照ください.)

 

http://www.fuji-oyama.jp/kankoubunka_spot_culture_M4txzAVx.html

 

このたび,小山町のご厚意により,森村橋の復原工事の際に撤去された組立部材を学術研究用にご提供いただき,卒業研究として,組立部材の錆の程度について調べることができましたので,その状況についてお伝えします.

 

鉄は錆びた状態で放置しておくと,錆びた部分が人間の虫歯と同じように溶けてなくなり,橋の骨組の場合には断面積が減少することになります.このため,錆びた骨組の強さを調べるためには,骨組を構成する鋼板や鋼材の錆びた後の厚みを知る必要があります.技術革新が進み,厚みを調べる方法として,超音波,デジカメ画像やレーザー光等を利用した計測装置,技術が開発されていますが,卒業研究では,確実に厚みを計測することができるキャリパーゲージと呼ばれる大型のノギスと,最新鋭の3Dレーザスキャナも使って錆びた骨組の形状も計測しました.

 

厚みを計測する前に,カップワイヤブラシと呼ばれる硬い刷毛のようなものを電動工具に取り付けて,組立部材の表面についた錆と塗装を取り除きました.一番上の写真は,錆や塗装を取り除く前の状況,上から2番目の写真は電動工具を使ってそれらを取り除いている状況です.飛散した錆や塗膜が目や口に入らないようにするため,作業は防塵マスクとメガネを着用して行いました.上から3番目の写真は,電動工具でそれらを取り除いた組立材表面の写真です.錆びた部分が溶けて,穴のようになっていることが分かります.次に,上から4枚目の写真のように,厚みを計測する点を示すため,定規とペンを使って,方眼紙のように5mm間隔の格子線を引きました.(上から5枚目の写真)そして,上から6枚目の写真のように,鋼板の表裏から,格子線の交点にキャリパーゲージを挟んで厚みを計測しました.

 

一方,3Dレーザスキャナを用いた計測では,0.1mm単位の寸法まで正確に計測できるハンディスキャナを使用しました.計測前に,ハンディスキャナの調整と計測箇所のまわりにターゲットと呼ばれる白いマークを貼りつけてから,上から7枚目の写真のように,計測個所のまわりにレーザー光を当てて形状を計測しました.上から8枚目の写真のように,スキャナに接続されたノートパソコン上には,スキャンされた殆どそのままの形状が表示されました.計測終了後は専用のソフトウェアを使って,上から9枚目の図のように,計測した形状をパソコン上で3次元表示させ,計測された骨組の表面の座標値を使って寸法や厚みを計算することや,上から10枚目の図のように,その結果を表示させることもできます.