JABEEへの取り組み 明石工業高等専門学校

JABEE認定(2004/5)

本校の「共生システム工学」教育プログラムは、2003年度JABEE認定プログラム(工学(融合複合・新領域)関連分野)として認められました。

認定証(クリックして拡大できます。)

|JABEEの目的 | 明石高専の方針 | 取り組みの経緯 | 教育プログラムの名称 | 養成する技術者像 | 学習・教育目標|
| プログラムの修了要件 | 履修対象者 | 学生からの質問への回答 | 「共生システム工学」教育プログラム履修の手引き |

JABEEの目的
 日本技術者教育認定機構 (Japan Accreditation Board for Engineering Education:略称JABEE) による技術者教育の審査・認定が始まっています。この制度は日本の高等教育機関における技術者教育を充実させ、国際的に通用する技術者を育成できるよう、教育プログラムを審査し認定するものです。 

明石高専の方針
 JABEE認定を受けられる教育機関は4年制大学と専攻科を有する高専・短大です。
 本校では、機械工学科、電気情報工学科、都市システム工学科、建築学科の4学科と機械・電子 システム工学専攻、建築・都市システム工学専攻の2専攻を複合した教育プログラム(共生システム工学)を 設定し、技術者教育の更なる充実・改善に取り組んでいます。
取り組みの経緯
○平成13年度〜平成15年度
○平成16年度〜
教育プログラムの名称
 明石高専の教育プログラムの名称は「共生システム工学」です。
プログラム名の由来と意味:

 学内の教職員にJABEEの融合プログラム名を募集しましたところ、ある女性職員が次のように応募しました。多くの教職員がこの意見に共鳴してできたのが「共生システム工学」という名前です。

 自然とともに、人とともに、技術とともに、明るく、元気に、たくましく、生き抜いていける力を持った工学技術者を育てることを目指したプログラムという意味合いを込めています。以下、簡単な提案理由です。
 子育て真っ最中の母親として、近頃の子どもを取り巻く環境の厳しさに心を痛めています。いじめ、不登校、虐待。お受験、塾通い。痛ましい事件の数々。どんなことがあっても、明るく元気にたくましく生きていける力を持って欲しいと切に思います。図らずも、にわかシステム管理者になってしまった者として、日々の運用に携わりつつ思うことは、確かな技術と知識は不可欠だけれども、それだけでは決して新しいシステムは作り出せないと痛感しています。何とかならないか?!と考えつづける根性とか、失敗を恐れない強い意思とか、人との対立とか衝突さえ恐れずどんどん人と関わっていく勇気など、技術を活かしえるだけの心のタフさがもっと要求されるのではないかと思います。一連の雪印事件、無許可添加物使用事件等など、近頃の世情を憂いています。頑固なまでにいいものを作り出そうとする職人かたぎとか、生産者としての倫理観とか責任感とか、いったいどこへ行ってしまったんだろうと思います。
 以上のような近頃の思いを込めて、技術への確固たる信念を持ちつつ、人との関わりや自然との共存も見失わないエンジニアを養成するプログラム名として、「共生システム工学」を提案します。
 

養成する技術者像
 最も得意とする専門分野の知識・能力を持ちながら、関連する他の専門分野や一般教養の知識・能力を複合した複眼的視野に基づき、人との関わりや自然や社会との共生に配慮した多次元的なシステム思考のできる技術者


複眼的視野に基づく、人との関わりや自然や社会との共生に配慮した多次元的なシステム思考


時間経過とシステム思考
学習・教育目標
(A)共生に配慮できる豊かな人間性と健康な心身  (a)
    (A-1)自然や社会との共生について配慮できる。
    (A-2)教養を高める努力ができる。
    (A-3)心身の健康保持の大切さを学び実践できる。


(B)国際性と指導力  (a)・(f)・(h)

    (B-1)複数の外国語と文化について学習し、国際性を養う。
    (B-2)地球的視野で共生に配慮して、異文化への対応ができる。
    (B-3)グループワークに積極的に取り組み、指導力を養う。


(C)技術者倫理  (b)

    (C-1)「もの」や「空間」を生み出す専門的職業人として技術者の責任を認識し、自然や社会に及ぼす技術の影響について理解できる。
    (C-2)専門分野の学会の倫理条項について理解し、説明できる。


(D)基礎学力と自主的・継続的学習能力  (c)・(d)・(g)

    (D-1)微分積分学、線形代数学、確率統計、数値解析などの数学および物理、化学、生命科学、地球物理、環境科学などの自然科学の基礎知識を修得し、それらを用いた問題解決能力を養う。
    (D-2)設計・システム、情報・論理、材料・バイオ、力学、社会技術などの基礎工学に関する知識と能力を養う。
    (D-3)卒業研究や専攻科特別研究を通して、研究・学習状況の把握や記録を習慣づけ、自主的・継続的な学習能力を養う。


(E)コミュニケーション能力  (f)

    (E-1)日本語による適切な文章表現、口頭発表および討論ができる。
    (E-2)英語による技術論文の読解力、プレゼンテーションの基礎能力を有する。
    (E-3)日本語による技術論文および英語によるアブストラクトが書ける。


(F)柔軟かつ創造的な設計能力  (d)・(e)

    (F-1)専門分野の知識や技術を用いて、課題に適応する具体的なシステムを設計できる。
    (F-2)「ものづくり」を体験的に学習し、柔軟かつ創造的な発想ができる。


(G)実践的な問題解決能力  (d)・(g)・(h)

    (G-1)基礎的な実験技術を修得し、実験結果を種々の方法で解析できる。
    (G-2)インターンシップや専攻科特別研究を通して、理論と実現象との相違や問題点を発見・抽出し、問題を解決する能力を養う。


(H)多次元的なシステム思考  (d)

    (H-1)主専門分野の知識と技術を深く学び、システム思考ができる。
    (H-2)共通的工学関連分野の幅広い基礎的知識を学習し、多次元的な思考力を養う。
    (H-3)他の専門分野についても積極的に学習し、複眼的視野を養う。

   (注1)各学習・教育目標の後の記号はJABEEの基準1(1)<参考1>との対応を示している。
   (注2)明石高専の教育目的との対応を<参考2>に示す。
 

<参考1> JABEE基準1(1)の項目
 (a)地球的視点から多面的に物事を考える能力とその素養
 (b)技術が社会および自然に及ぼす影響や効果、および技術者が社会に対して負っている責任に関する理解(技術者倫理)
 (c)数学、自然科学および情報技術に関する知識とそれらを応用できる能力
 (d)該当する分野の専門技術に関する知識とそれらを問題解決に応用できる能力
 (e)種々の科学、技術および情報を利用して社会の要求を解決するためのデザイン能力
 (f)日本語による論理的な記述力、口頭発表力、討議等のコミュニケーション能力および国際的に通用するコミュニケーション基礎能力
 (g)自主的、継続的に学習できる能力
 (h)与えられた制約の下で計画的に仕事を進め、まとめる能力

<参考2>明石高専の教育目的との対応
 (1)健康な心身と豊かな人間性:(A)、(B)、(C)
 (2)柔軟な問題解決能力:(G)、(H)
 (3)実践的な技術力:(D)、(F)、(H)
 (4)豊かな国際性と指導力:(B),(E)
 

プログラムの修了要件
 「共生システム工学」教育プログラムの修了者は以下の要件を全て満たした者であり、修了者には修了証書が授与されます。
 (1) 本教育プログラムにおいて、124単位以上を取得すること。ただし、専攻科での取得単位が62単位以上含まれること。
 (2) 別表2で定める学習・教育目標の達成度評価対象とその評価方法及び評価基準を充足すること。
 (3) 本教育プログラムにおいて、1800時間以上の総学習保証時間を経験すること。ただし、この中には250時間以上の人文科学・社会科学等(語学を含む。)、250時間以上の数学・自然科学・情報技術(別表1の基礎工学科目のA情報・論理系に相当する科目)及び900時間以上の専門分野(別表1の基礎工学科目(A情報・論理系を除く)と専門工学科目に相当する科目)の学習時間を含まなければならない。
 なお、学習保障時間には高等専門学校第3学年の修得科目、資格・検定科目及び通信教育を含めない。
履修対象者
  「共生システム工学」教育プログラムの履修対象者は、本校の専攻科入学試験に合格し、専攻科に入学した者です。
学生からの質問への回答
[ Q1 ] JABEE対策では、勉強や成績評価が厳しくなっただけのような気がします。学生側のメリットは何なのでしょうか。

[ A ] JABEE(日本技術者教育認定機構)の制度は日本の高等教育機関における技術者教育を充実させ、国際的に通用する技術者を育成できるよう、教育プログラムを審査し認定するものです。本校が認定を受けると、学生は国際的な基準を満たす技術者能力を身につけることができ、海外でも国内と同様に専門技術者として活躍できるようになります。また、認定を受けることで学生に対する社会的評価が向上し、就職に際してもメリットが発揮されることが考えられます。特に、将来技術士として活躍したいと考えている学生には、1次試験が免除され、修習技術者として実務修習に入ることができる利点があります。

[ Q2 ] 国際性やコミュニケーション能力といっても、英語力がかなり不足している現状を改善することが必要ではないでしょうか。

[ A ] 英語力は、国際性を身につけ、海外で勉強や仕事をするために、また外国人とのコミュニケーションを円滑にするために欠くことのできない大切な能力といえます。「共生システム工学」教育プログラムでは、その修了要件として「TOEICのスコア400点相当」を掲げています。このため、本校では外国人教員を採用し、平素よりネイティブ英語が学べるようにしています。また、TOEIC練習システムをLANを通して提供するサービスも開始しています。さらに、後援会にお願いして平成14年度よりTOEICのIPテストを本校で受験するようにしました。現在は、5月に専攻科1年生全員と希望者、12月に4年生全員と希望者を対象に実施しています。また、平成20年度から、本校はTOEIC賛助会員になり、平成20年度には専攻科の希望者に5月のTOEIC公開テストの団体申し込みも実施しています。学生諸君は、このような機会を積極的に活用し、英語力の向上に磨きをかけていただきたいと思います。

[ Q3 ] 「共生」の意味をもう少し明確に説明してほしいと思います。

[ A ] 「共生」という言葉には、技術による人類の幸福の追求と地球資源や自然環境の持続との両立を希求するという意味合いがあります。本校の技術者教育プログラムの名称の由来については、ホームページで公開している文章にもっとも適切に凝縮されています。すなわち、「自然とともに、人とともに、技術とともに、明るく、元気に、たくましく、生き抜いていける力を持った工学技術者を育てることを目指したプログラム」ということです。

[ Q4 ] 豊かな人間性や創造力を育てることは、現状のゆとりのないカリキュラムでは難しいと思います。

[ A ] 本校のカリキュラムは、5年間でほぼ大学レベルに相当する教育課程を終了し、それに続く2年間の専攻科課程では一般教育や専門教育を更に高度化し、充実させる内容になっています。5年間の高専課程のカリキュラムは、時間割上で見ても過密と思われるかもしれませんが、専攻科課程は選択科目が多く、取得すべき単位数も大学とほぼ同等となっています。本校の「共生システム工学」教育プログラムは、高専(4,5年)と専攻科を連携する4年間のプログラムですので、時間的なゆとりと同時に、豊かな人間性や創造力の育成が十分可能なカリキュラムになっています。

[ Q5 ] 多次元的なシステム思考という面では、他学科や他大学で受講できるチャンスをもっと広げるべきではないでしょうか。

[ A ] 本校では、従来より専攻科の他専攻の科目を受講することが可能でした。さらに、学科においても平成15年度より他学科の選択科目を受講できる制度を発足させるとともに、従来の放送大学の科目履修に加えて、神戸大学工学部・理学部・海事科学部との単位互換協定に基づき入学料や授業料を必要とせず大学の授業が受けられる制度を実現しています。学生諸君はこのような制度を有効に活用されるよう期待しています。

[ Q6 ] 学生を育成するための教育環境を、学校側は十分に提供できているのでしょうか。

[ A ] 教育環境の問題は、まさしくJABEEが審査を受けるプログラムに対して厳しい要求を課しているところでもあります。教室、実験室・演習室、図書館、情報処理施設、福利施設などの充実は、これを実現しなければ教育プログラムが認定されない場合もあるため、現状に甘んじることなく、学生が学習・教育目標を十分に達成できるような環境の構築を目指して努力しているところです。

[ Q7 ] JABEEは学校側の押し付けのような印象があります。学生とのコミュニケーションがもっと必要ではないでしょうか。

[ A ] JABEEによる技術者教育プログラム認定に向けての取り組みには、学生諸君の協力が欠かせませんが、プログラムの本来の目的は国際基準を満たす技術者として必要な能力を身につけた学生を社会に送り出すことであり、成果の主体は学生(プログラム履修者)の側にあります。身につける能力の内容を学習・教育目標として設定し、目標に対する達成度を評価し、それを証明する責任は学校(プログラム)側にありますが、設定する学習・教育目標あるいは教育環境の改善による学生支援の方策などは学生や社会の要望に配慮したものでなければなりません。このためにも、学生諸君とのコミュニケーションは必要不可欠であり、今後も継続的に学生や地域社会とのコミュニケーションを図っていくつもりです。


Updated 2002/07/01
Last Updated 2009/6/18